JIIAフォーラム講演要旨

2011年8月2日
於:日本国際問題研究所

高橋礼一郎

駐アフガニスタン・イスラム共和国特命全権大使

「アフガニスタン―現状と課題(2014年を見据えて)」


アフガニスタンは2014年に大きな節目を迎える。この7月から治安権限の移譲が開始され、2014年に終了することになっている。これを契機に国際社会との関係に大きな変化が表れてくるものと思われる。そして、2014年はカルザイ大統領の任期が終了する時期でもある。カルザイ大統領はすでに2選されているので、憲法上再任はあり得ず、2014年5月に任期が切れることになっている。ポスト・カルザイをめぐる権力構造の行方が、今後のアフガンにとっては大きな課題となってくるだろう。

現在アフガニスタンに存在するリスクを内政、外交、経済という3つの視点から述べてみたい。まず内政のリスクであるが、2014年に向けたポスト・カルザイを巡る動きがどのように展開していくかが一つの懸念材料となっている。治安権限の移譲と共に、アフガニスタン主導による内政の建て直しがうまくいくのか注視していく必要がある。政府の権力が民族間でどのように配分されていくかという権力構造の問題も、タリバンとの和解という視点から内政上大きな意味がある。アフガニスタンでは中央による地方の支配は限定的で、中央と地方の両方がそれぞれ独自の支配力を持っている。このような部族政治と先進国が求めている法の支配のバランスがどうなっていくのかという視点も重要である。

外交については、パキスタンと米国が大きな鍵を握っている。パキスタンとアフガニスタンは合同委員会を設置してタリバンへのコントロールを深めようとしているが、本当にパキスタン側にアフガニスタンと協力していく姿勢があるのかどうかは分からない。米国についても、今後どこまでアフガニスタンに干渉していくのかによって、状況は大きく変わっていくだろう。アフガニスタンに対する周辺国の思惑はバラバラであり、パキスタンに偏りすぎたバランスをどう均衡させていくのかということも考えていくべきである。EUやその他の先進国は人権等の普遍的な価値を求めがちだが、これらについての成果をアフガニスタンに対して短期的に求めていくと混乱を生じかねない。

経済については、戦争経済から通常の経済への移行が大きな課題となる。アフガニスタンの経常予算は17億ドルであるが、軍と警察の維持に60−70億ドル費やしている。この軍と警察の維持費のほとんどは米国が拠出しているのだが、今後も米国が負担し続けていけるのかという大きな問題もある。地域経済協力を行ってアフガニスタンの復興を推進していくということも考えられおり、特に鉱山開発ならびにそれに関わるインフラの整備に注目が集まっている。しかし、これらの経済協力についても治安の不安定さや利権争いによって、必ずしもうまくいくとは限らない。

アフガン国民の目に映る日本の姿はきわめて好意的で、米国に次ぐ2番目のドーナーとして高く評価されている。今後は通常の経済へと移行するプロセスにおいて、混乱を避けるための経済的援助ならびに人的援助を行い、2014年以降も引き続きコミットメントしていくことが日本には求められる。地域経済協力の推進という点においては、単なる資源の確保やインフラの整備という視点に留まらず、もっと長い目で見た援助や協力のあり方を考えていく必要がある。

最後に2014年に向けた現実的なターゲットを述べて終わりにしたい。まず内政については、タリバンと政治的ディールができるようなリーダーを選出して、タリバンを取り込みながら軍や警察の能力を蓄えていくことが重要である。米国が撤退した後も35万人もの軍と警察を維持することは不可能であり、その状況の中で治安を維持していくには、うまくタリバンを取り込んでいくしかないだろう。外交については、米国とのパートナーシップをどういう形で継続していけるかが重要なポイントである。2014年時点でいきなり米国の関与がなくなると治安は維持できない。パキスタンとの協力関係の構築には、インドとパキスタンの2国間関係の安定化がひとつの鍵となる。経済については、どのくらいのペースで海外からの援助が減るのかを明確にして、身の丈にあった計画を立てていくことが求められる。

以 上