JIIAフォーラム講演要旨

2011年11月9日
於:日本国際問題研究所

モートン・ハルペリン

オープン・ソサエティ財団上級顧問

「民主的移行を支える日米の協力について」


のちに振り返ってみると、現在世界が民主的移行の大きな波にいることがわかるだろう。アフリカの小国から始まった動きであるが、それが世界中で大きなうねりとなっている。日本と米国が、この民主的移行をさらに盛り立てることは、世界的に見てとても意味がある。民主主義が脅かされてきた国々に対して、わたしたちは新しい民主主義を求める戦いを互いに強制することはできないが、支えることはできるし、支えるべきでもあろう。これが「民主主義共同体(CD: コミュニティ・オブ・デモクラシー)」の役割である。

第1に、世界各地における民主的移行はわたしたち、そして人類のためになる。民主主義国は法の支配を守り、取引相手としての信頼性をより高いものとする。破綻国になりにくいし、飢餓や飢饉にもなりにくいだろう。安全保障上の脅威、テロ、核不拡散にも協力するだろう。人々が自由を享栄することは、すべてのひとにとって自然な欲求であり、わたしたちはそれを見守りたい。

第2に、民主主義は外部から強制することはできないが、欧米的でない東洋などの文明やイスラムなどの宗教が、民主主義と両立しないという考えは正しくない。中東の春が、民主主義が世界的、普遍的願望であることを表している。トルコ、インドネシア、インド、マリそしてチュニジアを含めてその他の国々が今、イスラム教と民主主義が両立できることを示してきている。

日本、米国、そして他の既に民主主義国を達成した国々は、それらの国々で見られる民主主義をもとめる闘争をサポートし、この新しい民主主義が続くよう手助けするべきであろう。近年民主的移行を果たしたインドネシアなどが、現在民主的移行の道程にいる国々に、教訓や経験を伝えることも有効だろう。また、たとえばODAは、米国が最近設立したばかりである「ミレニアム挑戦公社(MCC)」と同様に、新しい民主主義に対して優先的に援助をされるべきであろう。OASと同様に、日本が民主主義共同体の議長国であるモンゴル、そして韓国や他のアジアの民主主義的な国々と共に協力できれば、より効果的だろう。

ここで簡単に民主主義共同体の歴史を説明しておこう。2000年に、ワルシャワ宣言を採択したポーランド、米国、インド、韓国、マリ、そしてチリが、ワルシャワにて集まり、この民主主義共同体の設立を構想した。日本も有馬政府代表を送り、財政的援助を行った。コフィ・アナン元国連事務総長も参加し、民主主義共同体に関して、国連がいつかその役割を果たせることを望むが、暫定的に民主主義共同体が世界を民主的方向へ導いていくことを歓迎すると述べた。そして、民主主義共同体は2年に1度、閣僚会議を行っている。

民主主義共同体のさらなる活動のために、組織再編が求められている。再編のひとつとして、民主主義共同体をサポートする運営審議会(GC)が設立された。日本が、その運営審議会にスウェーデン、オランダ、コロンビア、コスタリカ、ナイジェリアと同様に加わったとの嬉しいご報告ができ光栄である。

近年では民主主義的パートナーシップなどの新しい取り組みもなされている。民主的移行の途中にある国々のニーズに基づいて、民主主義諸国やNGOが協力してサポートしていくものである。たとえば、オランダとスロベニアが協力するチュニジアのもの、米国とポーランドが協力するモルドバのものなどが挙げられよう。またモンゴル大統領による民主化教育の取り組みや、ジュネーブやニューヨークにある民主的集会なども見られる。日本が今後運営審議会で活躍され、モンゴル大統領を支え、国連での協力を強化してくださることを期待する。

以 上