JIIA国際フォーラム「日アイルランド:繁栄と成長に向けたパートナーシップ」エンダ・ケニー アイルランド首相 |
2013年12月3日 於:国際文化会館 |
アイルランドは1922年に独立を果たし、1957年に日本と国交を樹立した。当時は農業中心の経済であったが、現在は高付加価値の製品やサービスも輸出するような成熟した経済構造を有するに至っている。2000年代に活況を呈していた経済は、私が2011年に首相に就任した時には、国家創設依頼最大の危機に直面していた。バブル崩壊で経済は大きく落ち込み、社会は失業者で溢れていた。対外支援を得ながら経済の再建に取り組み、競争力の強化も行ってきた。現在、アイルランド経済はようやく佳境を乗り越え、12月には対外的な支援も終了するまでに回復した。日本を含め国際社会から受けてきた支援に対して謝意を表したい。引き続き経済開放を進め、ビジネス環境の整備とともに、更なる競争力の強化に取り組んでいきたい。 日本とアイルランドの交流は、141年前の4名の岩倉使節団のアイルランド訪問にまで遡ることができる。その当時にはアイルランドからも日本へ渡航した人物がおり、日本文化を世界に広めた小泉八雲や、君が代を作曲したジョン・ウィリアム・フェントンなどは、その中でも著名な人物として現在でも知られている。日本はアジアで最初にアイルランドと国交を樹立した国であり、2017年にはその60周年の節目を迎える。昨年の6月には安倍首相もダブリンをご訪問してくださり、私も今回、東京訪問を実現することができた。今後、更に交流を深め、経済技術協力も促進して、日アイルランドの関係をより強固なものとしていきたい。 アイルランドはEUのメンバーとして経済的にも制度的にも多くの利益を享受している。アイルランドのEU加盟40周年を記念する本年6月には、成功裏にEU議長国を努め終えることができた。その在任時には、歴史的な日EU・EPAの交渉開始が決定され、大きな喜びを味わうことができた。先月の日EU定期首脳協議でも確認できたように、日EU・EPAはとても重要で有益な協定であり、できるだけ早期の実現が望まれる。ASEMでは日本とアイルランドの両国は共にその加盟国であることから、EU諸国とも連携しながら協力関係を築いていきたいと考えている。 平和構築や安全保障の分野においても、アイルランドは積極的に貢献してきた。国連の安全保障理事会や人権理事会のメンバーにもなり、また、国連平和維持活動においては半世紀以上にわたりその活動を支えてきた。国連平和維持活動で蓄積された教訓や経験は豊富で、紛争解決という分野においては、多くの専門的な知見を抱える国家となった。また、軍縮や核不拡散を推進する運動においても、日本と同調しながら様々な視点からコミットし続けてきた。とくに核兵器の削減や核の不拡散に関連した国連決議や国際条約の提起については、積極的な役割を担ってきた。アイルランドは財政的に厳しい中も、開発協力に力を入れており、開発援助に関するプログラムも実行していきた。こうした分野でも日本との今後の協力が期待されるところである。 今後、アジアは大きく発展していくことが予想されており、将来的には世界の人口や生産の半分以上がこの地域で生み出されることになる。アイルランドも政治的経済的な繋がりをアジアにおいても広げ、その成長の果実を共有していくことが求められる。また、現在はグローバルな問題が山積していることから、アジアに留まらず世界的規模で協力関係を構築し、国際組織とも連携しながら、気候変動や、エネルギー・食糧問題、地域紛争等の諸問題に取り組んでいかなければならない。アイルランドと日本は二国間関係の深化を通して、このような地球規模の課題についても共に力を合わせて対処していけるであろう。日本とアイルランドは1万キロ以上も離れており、それぞれの起源や文化の違いも存在している。しかし、我々はそのような相違を超えて団結し、新たなる関係強化に向けて、将来にわたって相互に協力し合っていかなければならない。 |
以 上 |